先日、仕事から帰宅すると、玄関先に「それ」は転がっていました。泥のついた巨大なタケノコが三つ。
一瞬、現代版『ごんぎつね』の仕業かと思いましたが、あいにく狐の知り合いはおりません。おそらく向かいのご主人が、山との死闘の末に持ち帰った戦利品のお裾分けだろう。実にありがたい。
だが、真の戦いはここからでした。
光り輝くタケノコを見た妻が、満面の笑みで
「わあ、立派! タケノコごはん食べたいね。……じゃ、あとは『よろしく』!」
「よろしく」の一言で、私の残業(家事)が確定しました。
仕事の道具を放り出し、包丁を抜き皮を剥き、巨大な体躯を切り刻み、鍋の湯に沈めてはアクを抜く。台所の上から下まで使って、さながらタケノコ解体現場。
奮闘すること三時間。時計の針は無情に回るが、至高の一杯のためには、この試練を乗り越えねばなりません、深夜、23時  ようやくあくを滅ぼした平和なタケノコは冷蔵庫に保管され、翌日、タケノコごはんとみそ汁、天ぷらと明太和えとなり私たちの体に春の到来が訪れました